「パッチギ!LOVE&PEACE」(2007年、日本)

リアルで情にあふれていて、少し「もったいない」映画でした。地上波にて鑑賞。

井筒和幸監督。前作の「パッチギ!」(2005年、日本)は、文句なしに面白かった。日本人の青年と朝鮮人の少女が惹かれ合い、国籍が違うがゆえの問題にぶち当たる姿を描いた青春映画。日韓、韓日の微妙な問題にズバッと切り込み、明るい暴力(という表現がピッタリ)を交えて描く井筒映画に、ちょっとした衝撃を覚えました。

今作はその続編で、前作で活躍したアンソンとキョンジャという兄妹が、俳優を変えてそのまま出てきます。まず、キャスティングがすごいなー、と。あまりにも物語の中に溶け込みすぎて、役者を役者と思えない感覚と言うのでしょうか。感情移入もしやすくなるので、こういう映画は観ていて気持ちいいです。調べたら、主人公の2人はオーディションで選ばれたようですね。その他の俳優人も、見事に「はまり役」だと思います。

ただ、ストーリーが……。 アンソンの息子の病気、キョンジャにほれ込む日本人・佐藤、芸能界入りするキョンジャ、治療費を稼ぐために危ない仕事をするアンソン、ところどころ入る兄妹の父親の戦争体験シーン… と、場面はめまぐるしく変わっていきます。人間関係や場面のつながりの説明が乏しく、前作を観ていなかったり、ちょっとでも会話を聞き逃したりすると、話の流れがよく分からなくなってしまうのです。それが「もったいないな」と思ったところ。「朝鮮人になんて生まれてこなければよかった」とキョンジャが叫ぶクライマックスシーンも、それゆえに感動が薄れてしまいました。

「芸能界では在日ということを隠せ」「CMなんか、スポンサーが嫌がって出してくれない。使われてもロッテくらい」。そんな台詞がリアルで、相変わらずすごいことを言わせる監督だな、と感心してしまいました。<広告>