「リダクテッド 真実の価値」(原題: Redacted)【2007年、米国】

「問題作」と形容される映画は多いですが、これこそ本物の問題作です。雑誌「ぴあ」によると、「米国公開時にはアメリ保守系メディアの大手FOXニュースが上映拒否運動を展開し、ネット上には本作に対する誹謗中傷が殺到。非常に小規模な興行で終わった」と言います。

政府関係者や保守系メディアにはこの「フィクション」が耐え難い「現実」だということが、皮肉にも浮き彫りになった形です。国をあげて「くさいものにフタ」をしたことになりますが、ネット上でも同じような意見しか出なかったのでしょうか…。

現在も続くイラク戦争におけるアメリカの負の部分を描いたこの作品は、米国政府やマスコミが都合の悪いニュースや情報を削除(リダクト)することを、痛烈に批判しています。

「これは事実に基づいたフィクションだ」という前置き通り、背景になるのは2006年3月にイラクバグダッドで実際に起きた、米兵による14歳の少女のレイプ殺人事件。1人の米兵による内部映像という演出を使い、レイプ事件に至るまでの経緯と事後を、多少荒っぽく進行させていきます。

ヘンデル作曲の「サラバンド」が映画の序盤で効果的に使われ、兵士たちの緊張と疲弊感をうまく表しています。

監督のブライアン・デ・パルマ氏は、68歳。トム・クルーズ主演の「ミッション・インポッシブル」の監督でもある方なんですが、この歳にしてこんな攻撃的な作品がつくれるのは「すごい」の一言。

映画の最後は、イラク戦争で亡くなった被害者の写真のスライド。これが結構、胃にグッときます。衝撃的な場面を見たくない方は、目をつぶっていたほうがいいです。そして、観客に問題を突きつけるように無音で流れるエンドクレジット。キャストやスタッフの名前を見て、この映画がフィクションであるということに改めて気付かされます。功名に作られた、擬似ドキュメンタリー映画。パンフレットに書かれていた、「ブッシュ政権の暗黒部分が暴かれたとき、この映画が正当に評価される」という監督の言葉が、とても印象的でした。

<参考サイト>
「リダクテッド」日本語版公式サイト
http://www.cinemacafe.net/official/redacted/

ブライアン・デ・パルマを直撃!新作『リダクテッド』で使用した禁断の映像」(Cinema Todayより)
http://cinematoday.jp/page/N0012850